Ⅴ.楽器

C.C.シャイニー・エアロケース

トランペットのケースは色々なものが世に出回っています。ハード/ソフト、シングル/ダブル/トリプル、etc。僕もこれまでに色々なケースを使ってきました。

かつては荷物を一まとめに出来る大きなケースが便利だと思っていました。楽器の他にミュートや小物、譜面、手荷物など全部が入るケース。でもさすがに重く、背負って背中を痛めたり、大きいので人や物によくぶつかっていました。
そもそも荷物の量はその時々で違うのに、「大は小を兼ねる」という考えでどんどんケースが巨大化、移動や乗り物への積み込みが難しくなってしまいました。
またセミハード・ケースにはチャック式のものがよくありますが、重さに耐えられず、特に角の部分が壊れてバックリ開いてしまいました。
ソフトケースは軽くて快適ですが、潰されないかが心配で置き場所に困り、都心の満員電車に安心して乗れません。

以上により、僕的には“丈夫でコンパクトなシングル・ハードケースが良い”との結論に達しました。チャックではなく、金具で蓋を閉じるもの。荷物はその時々に応じて鞄を別に持つことにしました(大きめのリュックを背負ってますが、楽器じゃないので気楽です)。
最近の僕が3年ほど使っているケースは、これです。

Img_6477_2

C.C.シャイニー・エアロケースと同じものですが、“Eastman”というステッカーが貼ってありました(剥がれました)。だいぶ使い込んでいるのもありますが、この色合いや、表面のシボ加工がEastman独自のものらしいです(TAOで買った中古なので、選んだわけじゃありません)。
ハードケースなのに超コンパクト、飛行機内はもちろん、高速バスの狭い網棚にさえ収まります。内部は楽器型にくり抜かれていて防御力十分、椅子の高さから落としても中の楽器は無事でした。

Img_6486

楽器以外にマウスピース1本分のスペースと、オイルやグリス、スワブなどが入る小物入れ(蓋付)があります。僕はマウスピースを1本しか使わないのでこれで十分、楽器の隙間にクロスを押し込み、蓋の内側アンコに鉛筆とクリーニングロッドを差し込んでいます。ベル収納スタンドは勿論入りますが、僕はスタンドが好きじゃないし重いので入れてません。

あと、僕はストラップを使わないので外しています。最近のケースは3WAYを売りにしたものが多いようですが、僕はストラップがそんなに便利だとは思いません。ここまでコンパクトで軽いケースならストラップはかえってかさばり、置いたときにプラプラとたるんで邪魔。背負ったり降ろしたりする瞬間も危なっかしく、楽器に自分の目が届かないのは良くないと思っています。自転車に乗る場合は別ですが、都心を公共交通機関で移動するなら、手に持つ/こまめに置く/雑踏では抱える、この3パターンがシンプルで安全、ラクだと思います。とくにこのケースは極薄なので抱えやすいです。

Img_6487

このケースの唯一の難点は、持ち手が粗末な作りで壊れやすいこと。僕はレザークラフト用品で革製の持ち手を購入し、交換しました。そして念のため、僕はこのケースにベルトを必ず巻くようクセ付け、蓋の金具閉め忘れ対策としています。

Img_6476

「オジサンが学生みたいな可愛いケースを」とよく言われますが、オジサンだからこそ見た目より使い心地が優先。
中古で¥8,000で購入したケースですが、新品は2万円以上と結構するようです。でももし今のものが壊れてしまったら、2万円出して同じものを買うと思います(何色にしようか選ぶのも楽しそうです)。そのくらいこのケースに満足しています。

|

使用楽器

【Bach180ML 37/25 GL】

Bach180ml37252_2

僕の使用しているモデルは“Bach180ML 37/25”という、世界で最もユーザーが多いトランペットです。ただほとんどは銀メッキのモデルで、僕が使用しているラッカー(透明な樹脂被膜を塗布したもので、地金の色が見える)モデルは比較的少数派のようです。ラッカーは、銀メッキよりも軽めの音色になります。

それ以前は某国産メーカーのライトモデルを吹いていました。軽い楽器は抵抗が少なく吹きやすい、というメーカーの謳い文句を信じていたのです。でもその頃の僕はいつもすぐに「バテ」、ペース配分やコンディション管理に神経質になっていました。
ところがある時何気なくBachを試奏してみたら、キツいと思っていたのに何時間も楽しく吹け、その場で購入即決しました。それでわかったことですが、楽器の重さや抵抗感は、奏者の体格や体力によって相応しいものがある、ということ。それなりにパワーがある人は、ある程度の重さがある楽器を吹いた方がバランスが取れてラクだと思います。
僕はやがて3本のBachラッカーを所有することになりましたが、一点だけ不満があり改善しました。それはチューニングスライドです。


【ラウンドクルーク】

Bachslide

持っている3本のBach全てに、僕は“ラウンドクルーク・チューニングスライド”を装着しています。画像上が通常のスクエアクルーク、下がラウンドクルークです。
通常のスクエアクルークは息が引っ掛かり、それが高音への足掛かりになりますが、楽器の性質としては“堅さ”を感じます。そのままムリに柔らかく吹こうとするとツボを外して「バテ」てしまい、Bachはソロよりもアンサンブル向きの楽器という気がします(ヴィンテージBachは違うようですが)。
ラウンドクルークを装着すると息が素直に楽器に入り、堅さがとれてオープンな吹奏感になります。演奏中にノリや感情に左右されやすい僕は、どう吹いてもとりあえず鳴るラウンドクルークを愛用しています(実力はモロに出てしまいますが)。
Bach正規品のラウンドクルークが野中貿易から別売されていますが、どうもスクエアクルークより長いようで、冬場の野外演奏など気温の低いときにピッチを修正しきれない為、TAOでラウンド部分を短く加工してもらいました(本体側を切ると言ったら、TAOに反対されました)。よって正確には半円形ではなく、セミラウンドです。写真のものはノーラッカーですが、他のにはラッカーがかかっています。


【スライドストッパーのネジ】

Bachstopper

けっこう僕にとって大事なところです。3番スライドのガイド先端で、2つのネジを互いにキツく締め固めています。
僕の活動はコンボ中心なので、ピッチ修正のためのスライドワークはあまりしていません。よって本来なら手前側で固定してしまえばプランジャー・ミュート使用時のスライド脱落を防げて良いのですが、どういうわけかこの位置でネジを固定すると高音が当てやすくなるのです。プランジャー使用時の脱落防止の為にゴムをかけ、掃除はスライド先端のU字管を外してしています。


【オリジナルマウスピース・AK1】

Ak1

沢山のメーカーから様々なモデルが出ているとはいえ、マウスピースの各部位・・・カップ、エッジ、リム、スロート、バックボアetc、それぞれの形やサイズを自由に確かめるのは、既製品では無理だと思います。そこでネジ式のマウスピースを作って各部位をあれこれ試すという方法がありますが、それだとネジの締め具合などもあり迷いが増えそうです。僕は理想のマウスピースのイメージがなんとなくあったので、YAMAHA銀座アトリエにオリジナル・マウスピースをワンピースで制作してもらい、運良くそれは成功しました。
長い事使ってきたYAMAHA11C4N(中川モデル入門用)を、同じくYAMAHAのカスタムモデルという少し重いマウスピースに移植、その後スロートをドリル#26(中川モデルは#28、通常モデルは#27)に拡張しました。大きめなスロート + 狭い中川バックボアで、全体の形状がストレートに近くなっています。
これらにより、オープンな吹奏感と抵抗感が両立出来た、と感じています。ありもののサイズや形状を組み合わせただけですが、オリジナルということで僕のイニシャルから“AK1”と刻印してもらいました。

Bachak1_3

全体的に、僕の楽器はBachをMonetteに幾分近づけた感じだと思います。オープンな息の流れと、重さによる抵抗感、という方向性です。感情や力に任せて吹きたい人には有効なセッティングだと思います。

では3本の楽器をそれぞれ紹介します。全て中古で購入したものですが、修正や調整で結局どれも新品を買うくらいの費用がかかりました。
(またBachはベルが柔らかく、ちょっとぶつけただけでも凹んでしまうので、大体いつもどれか一本がTAOに入院しています。)


【#216757】
Bach180ml3725216757「Semi-Early Elkhart」と呼ばれる、まだハンドメイドの要素が残る1980年代初期の物。ナゼか組付けが雑で、修正してやっと吹きやすくなりました。赤味を帯びていますが、普通のラッカーモデル。大きな事故歴があるらしく、ベルは全く響きません。

【#400433】Bach180ml37252400433初めて入手したBachで、1990年代初頭のもの。3本中、最も美品。ノンラッカーのラウンドクルークを装着してますが、まだ擦り合わせがイマイチで実戦配備してません。ベルU字形状もラウンドです。

【#439108】Bach180ml3725439108 友人から譲ってもらった、1990年代中頃のもの。遠鳴りするのでモニタリングが優しく、アコースティックな現場が多い僕はメインで使用しています。写真ではわかりませんが、リードパイプが左右方向に曲がっており、普通に構えると若干ベルが右を向きます。


【ラッパの吹き方を教えてくれる楽器】

…このようにBachはよく言われますが、トランペットらしい音色を持ち、奇をてらわず素直に作られているからだと思います。僕も同感で、Bachのおかげでトランペットとはこういうものかと思えるようになり、吹くことが苦しみでなくなりました。古いBachを吹き続けているベテラン奏者を何人も見てきましたが、僕もこの楽器をずっと手放せないと思います。時々、外観や音色の美しい楽器、職人のハンドメイドによるシグネチャーモデル、希少なヴィンテージ楽器などと出会い誘惑もありますが、費用対効果を考えて思い直し、現在の楽器を吹き続けています(それら出会った楽器の良い部分は、無理ない範囲で自分の楽器に取り入れ、今のセッティングになったとも言えます)。
そして楽器よりも大切な音楽のことをもっと考えていきたい、と思っています。

|